忘れん坊の外部記憶域

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日本で急進派の支持者が増えない理由

 政治や経済の分野では「保守(コンサバ)」と「革新(リベラル)」、「右派」と「左派」のような思想による区分けがされますが、もう一つの軸として「急進派」と「穏健派」のような手段による区分けもあります。

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 この区分自体はまあ一般的です。

急進派と穏健派の特徴

 急進派はドラスティックに変革することを好む派閥です。ドラスティックは「思い切った」「抜本的な」「激烈な」というような意味合いで、現状をひっくり返すような大きな変化を意味します。革新的な考え方ですので、どちらかというと左派・リベラルな人に多い考え方です。

 穏健派はその反対、マイルドに変えていくことを好む派閥です。マイルドは「穏やかな」「刺激の少ない」「軽度の」というような意味合いです。現状を漸次的に変えていくという保守的な考え方ですので、どちらかというと右派・コンサバな人に多いでしょう。

 どちらが良い悪いというものではなく、使い処とタイミングが重要です。

急進派と穏健派の対立 

 今回は右派・左派は置いておいて、急進派と穏健派の話をしましょう。 

 急進派と穏健派はどうしても対立しがちな構造にあります。派閥の構成に差異があるからです。穏健派は既得権益層や人生で得た多くを抱えている年長者が多くなります。すでに得たものが多く守るべきものを持つことから、急激な変化を必要としていないためです。対して急進派はあまり権益を持たない層やまだ人生で守るべきものが少ない若年者が多くなります。マルクス主義的なとらえ方をすれば、ブルジョワジーには穏健派が多く、プロレタリアートには急進派が多くなると言えるでしょう。

 この説明だと急進派と穏健派の比率は社会の年齢分布と格差の程度によって決まるような気がしますが、実際にはそうなっていないこともあります。

 日本を例とすると、与党は既得権益層で穏健派、野党は非既得権益層で急進派となります。格差の叫ばれている昨今で言えば急進派の野党支持率が高くなりそうなものですが、実際にはあまり高くありません。また与党支持率は若年者のほうが高くなっています。日本では既得権益を持たない若者のほうが穏健派が多いということです。

 理由は様々考えられます。個人的にはゆとり教育による競争心の低下と、生まれたときからモノが溢れているものの経済的には停滞しており社会の変動をあまり経験していないことが大きな要因だと思います。

若者の個人主義的価値観

 ただ個人的に1つ、最も大きな要因だと考えているのは今時の若者の個人主義的価値観です。私もそうですが、リベラル・アイロニストが増えているのではないでしょうか。

 要約すればリベラル・アイロニストとは公的なものと私的なものを峻別して扱う考え方です。さらに意訳して一部に適用した表現に変えると、「仕事よりもプライベートのほうが優先っス」というやつです。いや、もの凄い意訳というか曲解ですけども、まあ厳密に公私を分けるという意味では同じです。プライベートとパブリック、自身と他者が完全に分かたれていると、「私」というプライベートに干渉されなければ「公共」が何をしていても自由だと考えます。それは逆に言えば、「公共」が「私」に干渉してくることを強く嫌うということに繋がります。

 急進派は物事をドラスティックに変革することを望んでいます。劇的な勢いでの改変が行われると当然「公共」は大きく動揺することになり、「私」にも影響を与えてきます。対して穏健派は物事を漸次的に変革するため「公共」から「私」に与える影響は微小なものとなります。

 よって若者からすると

  「私」に干渉してこない穏健派のほうが共感できて、

  「私」に干渉してくる急進派は支持できない、

ということになるわけです。

 

  もちろん他にも理由は考えられます。しかし若者の個人主義的価値観は見逃すべきではない切り口の一つです。もっと公共に関わるべきだ、ニュースを見て世の中のことを知るべきだ、というのもおじさんの正論ではありますが、そんな干渉の仕方こそ若者は嫌がることを知っておいたほうがお得です。